出版社の雑誌編集部の仕事〈転職・就職志望の方に〉
ここでは出版社の雑誌編集部の仕事についてお話しします。
私は、新卒から14年、出版社の正社員として働いていました。
雑誌と書籍、どちらの編集部も経験しています。
出版社に転職・就職したい人や、編集の仕事に興味がある人にとって、リアルな視点として参考になれば嬉しいです。
出版社の雑誌編集という仕事
ここでの「雑誌」は、旅行、食などのライフスタイル、ファッション、美容など私が関わったことのある分野、つまり、「写真で構成された雑誌」のことを想定しています。
マンガや、文章メインのビジネス・報道系などの雑誌は、共通している部分もあるけれど、異なる部分も多いはず。
ビジュアルがメインの雑誌では、編集者(エディター)の仕事で特に大切なのが「魅力的なビジュアル(=主に写真)」を作ること。
といっても、編集者自身がカメラマンさんでもスタイリストさんでもないので、魅力的なビジュアルに仕上がるように、カメラマンなどのクリエイターに方向性を指示する役割をします。
毎月、編集会議などで決まった台割のもと、編集班→編集者に担当が割り振られます。
担当になったページの構成を考えて、それを絵コンテにして、スタイリスト、モデル、カメラマン、ライター、デザイナーなどに依頼をします。
その過程で、上長にも、内容の確認をします。
アイディアを周りに相談したりもします。
実際の撮影現場では、より細かく、方向性を伝えながら、カメラマンさんやスタッフから出てくるいろんなアイディアもディレクターとして判断する必要があります。
現場での編集者は、スタッフみんなをまとめる係。
団体旅行に例えると、プランを細かく考えて、当日のツアーコンダクターをするような感じ。
当日、その場に集まった人たちに、ツアーの目的を達成してもらえるよう、アテンドする。
お昼ご飯の手配もしておくし、入場券を買っておいたりも。
ちなみに、クリエイティブなプロフェッショナルの方の中には、猛獣みたいな人がいることもあるので、いろんなハプニングも想定しておく必要があります(笑)。時々ね。
編集者は、取材相手に出演依頼の交渉もします。
例えば人気のタレントさんに出てもらうには、企画書を作り、事務所に依頼します。
雑誌の取材謝礼は少額なことが多いので、断られ続けながらも、諦めずにまた次の候補者に当たるようなタフさが必要。
そういう場合でも、上の人から、「じゃあ人気タレントは諦めて、依頼しやすい新人さんにしよう」とはほぼならないのが雑誌の特徴…。
スケジュールぎりぎりまで初志貫徹を求められる場面が多いです。
そういった、妥協をしないものづくりが、雑誌編集者が忙しい要因のひとつ。
でも一方でそれが、雑誌が、クオリティやブランド力が高く保たれてきた理由だと思います。
いろんな雑誌の編集者と話しても、編集者はコンテンツに妥協しないところが、どの雑誌の人にも共通している印象。それが美徳とされるような文化もある気がします。
雑誌編集では文章を書くことも
編集者は、ページ中の文章もつくります。
これも正確にいうと、実際にはライターさんに依頼することが多く、編集者はライターさんに文章の方向性を指示したり、ライターさんが書いた文章を確認することが仕事です。
とはいえ、編集者が記事の文章を書くことも、普通によくあります。
その場合、すごい名文が求められるわけではないけど、ある程度わかりやすい文章を書けないといけません。新人のうちは、何度も書き直しが求めらるもの。
だから、おのずと文章力がアップします。
ありがたいことに、出版社では通常、「校閲さん」や「校正さん」と呼ばれるプロの校正者が、誤記や不適切な表現を指摘してくれます。
そうやって、出版物のクオリティが保たれているのです。
Webとは違い、後から訂正することが困難だから、ローンチするまでの作り込みを徹底的に行うのです。
編集部では締め切りの、最後のチェック作業を「校了」といいます。
この校了の時期になると、追い込まれた感じが表情にもファッションにも出てきます(笑)
雑誌編集者のセンス&コミュニケーション能力
また、雑誌の収益は、広告に頼っていることが多いので、広告を出してくれているクライアント企業とのコミュニケーションが発生します。
タイアップ記事として、広告費をもらって商品紹介ページを作る場合、どんな風に紹介したいのか先方の意向を正確に理解したうえで、満足してもらえる見せ方を提案にしなければいけません。
だから、クライアントのニーズをきちんと理解するヒアリング力や理解力、それにアイディアも必要です。
能力としては、センスとコミュニケーション能力、どちらも大切。
動きとしては、相談したり、お願いしたり、見に行ったり、そんな日常です。
かと思えば、ひたすら読んだり、調べたり、地味な作業が続く時期もあります。
合間にSNS発信をしたり、時には接待をしたりされたりすることも。
あらためて、編集者の仕事内容は多岐にわたると思います。
それに、なかなかマゾヒスティックな面があるお仕事だったり。
でも、自分が好きなジャンルで編集をしている人は、とても楽しそうです。
それでは、編集者になりたい方に向けた記事もまた書きます。
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